初めてペットを
飼われる方へ
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単独行動をするネコとは違い、オオカミを祖先とするイヌは、群れで行動する習性を持っています。1頭だけで飼っている家庭の場合でも、イヌにとっては飼い主一家が群れの仲間となるのです。イヌは好き勝手にさせておくと自分の立場や家庭内のルールがわからず、飼い主の言うことを聞かなくなります。ついには来客に噛みついたり、「マテ」の号令を聞かず、車道に飛び出し、いのちに関わる事故を招いてしまうこともあります。
子イヌを迎えたら、家族全員がその子イヌのリーダー的存在になり、人間社会のルールを教えてください。ただし、小さなお子さんの場合は、必ず親御さんが手伝って「オスワリ」や「マテ」など、できることからはじめていきましょう。
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はじめて家にきた子イヌは、急に環境が変わったわけですから、とまどっています。移動の疲れもありますので、まずはゆっくり休めるよう、むかえ入れる前にその子の"部屋"を準備してあげましょう。ケージを用意し、そこにシーツや新聞紙を敷きつめたら、やわらかい布のベッドと飲み水を隅に置きます。食事の時間には食事と新しく入れかえた水もケージに入れます。
ケージに入りたがらない場合は、イヌ用のおもちゃで誘導します。ケージは家族がいる居間に置くのが人に慣れさせるためにはいちばんです。ただし子イヌには1日19時間の睡眠が必要といわれています。かわいいからと何度も抱いたり、寝ているのを起こしたりしないようにしましょう。
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子イヌを迎える前には、ケージやベッド、食器(飲み水用と食事用)、トイレとトイレシーツ、首輪、首輪につける迷子札(子イヌの名前と電話番号を書いておく)、散歩用のリード、毛の手入れに必要なブラシやコーム(クシ)、食事(最初はあなたの家に来る前に食べていたものと同じものが◎)、おもちゃを用意しておきましょう。
ブラシやコームは、長毛種と短毛種で異なります。犬種によっても毛質は違うものです。購入するときに、お店の人に相談するとよいでしょう。
現在は犬種別に飼い方の本も出版されています。できれば家族全員で読んで、どういう特徴や性質を持ったイヌなのかを学ぶと、その子イヌに対する理解がより深まります。
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子イヌは人間の赤ちゃんと同じで、まだ知らないことだらけです。なんでも噛んでみて感触を確かめたり、おもちゃにして遊びながら学習していきます。かじると感電して危険な電気コードはコンセントから抜いておくなど、絶対にかじられないようにしておきましょう。テーブルクロスなども、引っ張ると上のものが落ちて危険です。また部屋の中に観葉植物を置く家庭も多いようですが、口に入れると中毒を起こさせるものもあります。いたずらされると危ないもの、困るものは子イヌの届かない位置に置くようにしましょう。
ペットボトルやマヨネーズなどのフタ、クリップなど、飲み込んでしまうと危険なものは、必ずしまっておきましょう。
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子イヌが生後3ヵ月になったら、自治体への登録と、狂犬病予防注射を受けることが法律で決められています。 登録は生涯に1回、狂犬病予防注射は毎年1回です。
登録は地方自治体の福祉保険センターなどで行います。 その登録証と、登録の際に渡される狂犬病予防注射済票交付申請書を持って、指定された公民館などの会場や動物病院で狂犬病の予防注射を受けましょう。
狂犬病は、世界では年間4万人以上の死亡者が出ている恐ろしい病気です。日本では過去40年間以上発生していませんが、輸入動物が増加している昨今では安心はできません。必ず予防注射を受けさせてください
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狂犬病の予防注射は接種が法律で定められていますが、イヌには、もっと身近に存在する怖い病気がたくさんあります。 とくに、ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬レプトスピラ病、犬パルボウイルス感染症は死亡率が高い伝染病なので、必ずワクチン接種(予防接種)を受けさせましょう。
以前は生後10~15週齢くらいに接種することが一般的でしたが、現在はバイオテクノロジーの発達により、4週齢くらいから接種が可能になりました。早期の接種によって外に連れ出せる時期も早まり、子イヌの社会化のために「早期がよい」と考える先生も少なくありません。 地域によってある種の伝染病が少ないところもありますので、先生とよく相談し、接種の時期を決めましょう。
人間と同じで、熱があるなど体調の悪いときには接種はできません。
また接種後は、食欲が落ちたり発熱したりすることがあります。食欲が1日程度なくなるのは仕方ないとしても、急性の副作用は接種後15分~1時間以内にはっきり出ることがありますので、激しい運動や散歩は控えましょう。 もし、よだれをたらしたり、顔がむくむなどの急激な変化がみられたら、すぐに動物病院へ行き、処置してもらいましょう。
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犬糸状虫(フィラリア)は、蚊が媒介する寄生虫です。イヌの血液中にフィラリアの子ども(ミクロフィラリア)がいる血を蚊が吸い、その蚊がほかのイヌの血を吸うときに伝染します。イヌの体に入ったフィラリアは、成長し心臓や肺動脈に寄生します。病状としては、血液の循環が悪くなり、腹水がたまったり、血色素尿、失神などがあります。病気に気づかないうちに、突然死んでしまうこともある、とても恐ろしい病気です。予防期間は守りましょう。
フィラリアの予防法としては、毎月1回、予防薬を飲ませる方法があります。飲ませる期間は、蚊が発生したいる間ですが、蚊がいなくなった後も1ヵ月間は与えます。もちろん、地域によって異なります。秋になっても蚊はまだいますし、かえって夏の蚊より活発な地域も少なくありません。「もう秋だから」と勝手にやめてしまわず、先生の指示にしたがって、毎月きちんと飲ませましょう。蚊取り線香やイヌ専用の防虫スプレーを使用する人もいるようですが、これらではフィラリアの予防はできません。ヒト用の防虫スプレーも同じです。
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先にふれたフィラリアは検便ではみつけられませんが、腸に寄生する虫は、検便でみつけられることも少なくありませんので定期的に検便を行いましょう。寄生虫は、ノミやマダニ、シラミなど体の外に寄生するものと、体の中に寄生するものがあります。現在の日本では、イヌの体の中に寄生する虫の主なものはフィラリアのほか犬回虫、犬条虫、犬鞭虫、犬鉤虫の4種です。犬回虫は、胎内で感染することもあり、生後2週齢くらいの子イヌの腹部が膨張したり、咳やシャックリが出ます。まれにけいれんを起こすこともあります。
検便で発見でき、薬で駆虫が可能ですので、様子がおかしいときは先生に早めに相談しましょう。犬条虫は、肛門の周りに白ゴマのようなものが付着していることで発見されることが多い寄生虫です。犬条虫はノミにその卵がいて、イヌがノミを飲み込んでしまうことで感染します。ですからノミを駆除することでも予防になります。
犬鞭虫は出血性の下痢を起こすため、貧血を招きます。犬鉤虫は小腸に寄生して、血液を吸って生きる寄生虫です。ともにイヌはひどい下痢と貧血を起こしますので、早めに動物病院で駆除薬を投与する必要があります。
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「せっかく大金を出して買ったイヌだから、ふやして人に売ろう」と考えている人はちょっと待って!すべての子イヌが生涯大切にしてくれる人の手に渡るとは限りません。あきたから、かわいくなくなったからと、捨てられて不幸な結果になる子イヌがまだまだ後を断たないのが現実です。子イヌを産ませないためには、不妊・去勢の手術があります。「手術はかわいそう」とためらう人もいますが、手術をしないイヌの場合、雌は、卵巣腫瘍や乳腺腫瘍に、雄は前立腺腫瘍になる率が、手術を受けたイヌに比べて高いとの報告があります。また雄の手術は精子をつくれなくするだけで、交尾そのものは可能。 手術は決してかわいそうではないのです。最近は薬で発情を抑えることもできますので、家族の人とよく話し合ってから先生に相談しましょう。